「なんとなく今の税理士、頼りないんだよな……」
こういう感覚、持ったことはありませんか?でも「長年お世話になってるし」「変えるのも面倒だし」と、ずるずると関係を続けてしまっている経営者の方、意外と多いんです。
私は三上剛といいます。これまで20年以上、年商3,000万〜1億円規模の小規模法人を中心に、経営改善・融資支援・財務体制の構築をお手伝いしてきました。これまで累計400社以上の経営者と向き合ってきた中で、「税理士の質が会社のキャッシュを左右する」という現実を、何度も目の当たりにしてきました。
正直に言います。私自身も、かつて格安の税理士と契約して痛い目を見た経験があります。会計処理のミスが重なり、余計なコストが発生してしまった。その経験があるからこそ、「今の税理士で本当に大丈夫か?」という視点の重要性を身をもって理解しています。
この記事では、「今すぐ税理士を変えることを検討すべき危険なサイン7つ」をお伝えします。1つでも当てはまるものがあれば、一度立ち止まって考えてみてください。あなたの会社の未来が、かかっているかもしれません。
目次
サイン1:連絡しても返信が数日こない
「質問のメールを送ったのに、3日経っても返信がない」
こういう経験、ありませんか?これは、かなり深刻なサインです。
私が関わってきた経営者の中にも、税務署から問い合わせが届いたのに顧問税理士に連絡が取れず、数日間ひとりで抱え込んでしまったという方がいました。そのストレスと不安は、想像以上のものだったと聞いています。
税理士の業務には明確な繁忙期があります。年末調整が始まる12月から、個人の確定申告が集中する2〜3月、そして3月決算の申告が重なる5月まで──この半年間は、どの事務所もフル回転で動いています。この時期にレスポンスが多少遅れることは、ある程度やむを得ない面もあります。
ただし、繁忙期以外でも返信に何日もかかる、催促しないと動かない、という状態は完全にアウトです。良い税理士であれば、すぐに答えられない内容でも「確認して○日までにご連絡します」とひとこと返してくれます。それすらないなら、あなたは優先度の低い顧客として扱われている可能性があります。
融資の相談や事業判断など、税理士の意見が必要な場面は日々あります。回答が1週間来ないだけで、ビジネスチャンスを逃したり、銀行融資の実行が遅れたりすることも起きます。スピード感のない税理士は、成長を目指す企業のブレーキになってしまうのです。
目安となる返信スピード
- 緊急の税務相談:当日〜翌営業日以内
- 通常の質問・確認事項:1〜2営業日以内
- 繁忙期中:「いつまでに回答します」という中間連絡があること
サイン2:担当者が無資格のスタッフで、税理士本人が出てこない
「契約は税理士と結んだのに、いつも来るのは事務所の若いスタッフ。税理士本人とは、最初の面談のとき以来会ったことがない」
これも、要注意のパターンです。
会計事務所では、無資格のスタッフが多く働いています。税理士補助として記帳代行や書類整理などをサポートする役割は、業務として問題ありません。問題なのは、その無資格スタッフが実質的に「担当者」として全ての対応をしていて、税理士本人が出てこない状況です。
税理士にしかできない業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)は法律で定められています。そこに有資格者が関与していない状態は、サービスの質として根本的に問題があります。
私が支援した会社でも、入社1年目の無資格スタッフが「担当」として毎月対応していたケースがありました。その方なりに一生懸命やっていたのですが、少し込み入った節税相談になると「確認しておきます」と持ち帰るだけで、結局的確な回答が返ってくることはありませんでした。
確認すべきポイントは、「税理士本人が自社の業況を把握しているか」です。少なくとも決算期には税理士本人が関与し、経営者と直接話す機会があるかどうか——これは最低限のラインだと考えてください。
サイン3:節税の提案がまったくない
「毎年、決算が終わったら申告書が届く。それだけ」
こんな関係が続いているなら、それは税理士ではなく「申告書作成代行業者」と契約しているに過ぎません。
節税の提案は、決算直前にできるものではありません。決算の3〜6ヶ月前から計画的に動く必要があります。設備投資のタイミング、役員報酬の設定、各種の税制優遇措置の活用……これらはすべて、事前の準備があってこそ機能するものです。
私が知っている会社では、決算期直前に「今年は利益が出すぎているから何か対策できませんか?」と税理士に相談したところ、「もう時期的に遅いですね」と言われた、というケースがありました。事前に月次で数字を把握し、適切なタイミングで提案してくれる税理士なら、こんなことにはならないはずです。
以下の表は、積極的な税理士と消極的な税理士の違いをまとめたものです。
| 比較項目 | 積極的な税理士 | 消極的な税理士 |
|---|---|---|
| 節税提案のタイミング | 期中〜決算3ヶ月前 | 決算直前か、ほぼなし |
| 接触頻度 | 月1回程度の報告・相談 | 決算時のみ |
| 情報提供 | 税制改正情報を先回り提供 | こちらから聞かないと教えない |
| 経営数字の把握 | リアルタイムで把握 | 決算後にしか数字を見ない |
顧問料をコストではなく「投資」として考えたとき、毎年の節税額がその投資額を上回ってこそ意味があります。節税提案がない税理士は、その投資に見合うリターンをもたらしていない、ということになります。
具体的な節税策として、小規模企業共済・経営セーフティ共済への加入、役員報酬の適切な設定、減価償却の方法の選択など、経営者にとってすぐに使えるものがいくつもあります。「毎年こういった提案を受けているか?」を一度振り返ってみてください。
サイン4:試算表(月次の経営数字)が遅い、または提供されない
「銀行に融資の相談に行きたいから試算表を送ってほしいと頼んだのに、1週間以上待たされた」
試算表とは、月々の収益・費用・利益を集計した月次決算のようなものです。これが手元に届くのが遅い、あるいはそもそも提供されていないというのは、経営判断において致命的な問題になります。
経営者が「今、自社がどういう状態にあるか」をリアルタイムで把握できていない状態は、計器を見ずに飛行機を操縦しているようなものです。数字が遅れてしか来ないと、資金ショートの予兆を見逃したり、黒字倒産のリスクを見誤ったりする危険があります。
一般的に、試算表は前月分が翌月中旬〜下旬頃に届くのが目安とされています。それが翌々月にずれ込むようであれば、経営判断に支障が出ます。
また、試算表を渡すだけで何の説明もない、というのも問題です。数字の意味を一緒に読み解き、「今月はここが課題ですね」と伝えてくれる税理士かどうか、確認してみてください。
クラウド会計の普及により、優良な税務事務所ではリアルタイムに近いかたちで経営数字を共有できるようになっています。「試算表は翌月末頃にしか出てこない」という状況が長年続いているなら、それ自体がひとつの危険信号と考えてよいでしょう。
サイン5:税務調査で頼りにならない(税務署寄りの対応をする)
税務調査は、ほとんどの経営者にとって人生で数回しか経験しない緊張のシーンです。そこで顧問税理士が本当に「あなたの味方」として動いてくれるかどうか——これが試される瞬間でもあります。
実際の税務調査の場では、税務調査官と税理士の間で、追徴課税の範囲をめぐる真剣な交渉が行われます。過少申告加算税(追加納税額の10〜15%)で済むのか、それとも重加算税(同35〜40%)まで課されてしまうのか——その差は、税理士がどれだけ経営者側に立って交渉できるかにかかっています。
ところが、中には「調査が早く終わればいい」という姿勢で、調査官の言うことをほぼそのまま受け入れてしまう税理士もいます。「先生のいう通りです」ばかりで、納税者の立場から反論や交渉をしてくれないのであれば、その税理士を顧問に置く意味は薄いと言わざるを得ません。
事前に過去の税務調査でどのような対応をしてきたか、聞いてみることも一つの方法です。「税務調査の立ち合い実績が豊富です」と明言している事務所は、それだけ交渉力に自信があることの表れでもあります。
税務調査での「よい税理士」の動き方
- 調査前に経営者と十分に打ち合わせを行う
- 実地調査の場で経営者の立場を守る発言をする
- 調査官の指摘に対して、反論すべきは反論する
- 調査後も結果について丁寧に説明してくれる
税務調査に不安を感じている方は、国税庁の税務調査に関する情報も参考になります。
サイン6:税制改正の情報が来ない
日本の税制は毎年改正されます。インボイス制度、電子帳簿保存法、各種の控除の見直し……これらは「知っているかどうか」で、数十万円単位の差が生まれることもあります。
良い税理士は、税制改正の情報をただ伝えるだけでなく、「御社にはこういう影響があります。今のうちにこう準備しておきましょう」と先回りして動いてくれます。
一方、改正情報を全くシェアしてこない、あるいは「そういえばそんな改正がありましたね」とあとから知らされるだけ、という税理士は危険信号です。
税理士にとって最新の税務知識を維持することは、基本中の基本です。日本税理士会連合会では研修制度や情報共有の仕組みがありますが、それを活用して積極的に知識をアップデートしているかどうかは、税理士によって大きな差があります。
情報感度が低い税理士と付き合っていると、あなたが本来使えたはずの税制上の特典を取りこぼし続けることになります。これは目に見えない損失ですが、積み重なると相当な金額になります。
2025〜2026年に注目すべき主な税務トピック
- 電子帳簿保存法の適用拡大と実務対応
- インボイス制度定着後の経過措置の終了に向けた動き
- 賃上げ促進税制の要件と活用方法
- 中小企業投資促進税制・経営強化税制の動向
これらについて、今の税理士が積極的に情報提供してくれているか、一度確認してみてください。
サイン7:経営相談・融資の相談に乗ってくれない
「設備投資を検討しているので、融資の相談に乗ってほしい」と税理士に言ったら、「それは銀行に直接聞いてください」と言われた——こういう経験を持つ経営者は、思いのほか多いです。
税理士の本来の価値は、申告書を作ることにあるのではありません。経営者のパートナーとして、財務データをもとに経営上のアドバイスをすること。融資を受けるための財務体制の整備、資金繰りの改善提案、新規事業立ち上げ時のシミュレーション——こういったことに一緒に取り組んでくれる税理士こそ、本当の意味での「顧問」です。
特に融資については、試算表や決算書の内容が銀行にどう見られるかを熟知している税理士かどうかで、融資の可否や融資条件に大きな差が出ることがあります。「融資支援が得意」と明示している税務事務所を選ぶのも一つの判断基準です。
以下のような相談を持ちかけたとき、前向きに動いてくれる税理士かどうかも、重要なチェックポイントです。
- 金融機関への融資申込みに向けた書類の整備・サポート
- 新規事業の採算シミュレーション
- 会社の成長ステージに合わせた経営体制の提案
- M&A・事業承継に関する初期相談
「税務のことしかやらない」という税理士が悪いわけではありませんが、それ以上を期待していた場合のミスマッチは、早めに解消するのが得策です。
当てはまったら、すぐ変えるべきか
ここまで7つのサインをお伝えしてきましたが、「全部当てはまる!今すぐ変えよう!」と焦らなくていいですよ、ということも申し添えておきます。
税理士の変更には、適切なタイミングがあります。一般的に、税理士を変えるのに最もよいタイミングは法人税の申告書を提出した直後です。決算の3ヶ月前から申告書の提出までは、引き継ぎが難しくなるため避けるべきとされています。
また、現在税務調査が進行中の場合も、調査が終わり修正申告書を提出してからの変更をおすすめします。
変更を検討するうえでのステップをまとめると、次のようになります。
- まずは今の税理士に不満をきちんと伝えてみる
- それでも改善がなければ、新しい税理士の候補探しを始める
- 少なくとも2〜3社と面談し、比較検討する
- 決算のタイミングを見計らって切り替える
「お世話になっているから言いにくい」という気持ちはよくわかります。でも、遠慮して損をするのはあなたの会社です。税理士はあなたのビジネスパートナーであって、義理で続けるべき関係ではありません。
まとめ
今の税理士を変えたほうがいい「危険なサイン」7つを振り返ります。
- レスポンスが遅く、数日経っても返信がこない
- 無資格スタッフばかりが対応し、税理士本人が出てこない
- 節税提案がなく、決算書を作るだけの関係になっている
- 試算表の提供が遅い、または経営数字の説明がない
- 税務調査で頼りにならず、税務署寄りの対応をする
- 税制改正の情報が届かず、知識の更新がない
- 経営相談・融資相談に乗ってくれない
1つでも当てはまるものがあれば、「今の関係を続けることが本当に会社のためになっているか」を一度立ち止まって考えてみてください。
私自身、20年以上この仕事を続ける中で、「税理士を変えたことで会社が劇的に改善した」という事例を数多く見てきました。一方で、「もっと早く変えておけば良かった」と後悔する経営者にも出会ってきました。
顧問料は「コスト」ではなく「投資」です。質の高い税理士は、必ず元が取れます。この記事が、あなたの税理士選びを見直すきっかけになれば幸いです。