「先代から付き合いがあるから」「事務所が近所だから」「とにかく安い顧問料だから」——そういった理由だけで税理士を選び、後悔している経営者の方を、私はこれまで本当にたくさん見てきました。
はじめまして、三上 剛と申します。大学卒業後から20年以上、年商3,000万〜1億円規模の中小企業・個人事業主の経営改善・融資支援・財務体制の構築をサポートしてきた経営コンサルタントです。これまでの支援社数は累計400社以上。その現場で何度も目の当たりにしてきたのが、「税理士の質が会社のキャッシュを直接左右する」という現実です。
実は私自身も過去に格安の税理士事務所と契約して痛い目を見た経験があります。会計処理のミスが積み重なり、余計なコストと時間が発生してしまいました。その経験があるからこそ、今は税理士選びの重要性を強く感じています。
この記事では、税理士選びで失敗しないために知っておくべき5つのポイントをお伝えします。「今の税理士に漠然と不満がある」「これから初めて税理士を探す」という経営者の方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
なぜ税理士選びで「失敗」するのか
まず知っておいていただきたいのは、多くの中小企業が税理士選びをほとんど真剣に検討していない、という現実です。
「顧問税理士実態大調査2024」(船井総合研究所・税理士セレクション)のデータによると、税理士を一度も変更したことがない企業は全体の約50%にのぼります。「長年の付き合いがあるから」「特に大きな問題がないから」という理由で、同じ税理士と惰性で契約を続けているケースが非常に多いのです。
一方で、売上が伸びている成長企業と売上が減少している企業を比べると、成長企業のほうが「税理士を変更したことがある」と回答した割合が多く、さらに定期的な打ち合わせの頻度も高い傾向にあります。これは偶然ではないと思います。
では、税理士選びでよくある失敗パターンはどのようなものでしょうか。現場で見てきた代表的なものを整理するとこのようになります。
- 安さだけで選んで、必要なサービスが受けられなかった
- 紹介や口コミだけを信じて、自社の業種・規模に合わない税理士を選んだ
- 顧問料の内訳を確認せず、後から追加料金が発生した
- 連絡してもレスポンスが遅く、経営判断に支障をきたした
- 節税提案や融資支援をしてもらえず、機会損失が生じた
こういった失敗を避けるために、これから5つのポイントを一つひとつ見ていきましょう。
ポイント1:「顧問料の安さ」だけで選ばない
まず最初に断言しておきます。顧問料の安さだけを基準に税理士を選ぶのは、失敗への一番の近道です。
私自身がそれで痛い目を見ましたし、支援先の経営者からも「安い税理士を選んで後悔した」という話を数え切れないほど聞いてきました。ただ、かといって「高ければいい」というわけでもありません。大切なのは、「払う費用に見合ったサービスが受けられるか」です。
顧問料の相場を知っておく
まずは相場感を頭に入れておきましょう。税理士への報酬は大きく「月額顧問料」「決算申告料」「オプション費用(記帳代行・給与計算など)」の3つで構成されます。
| 区分 | 月額顧問料の目安 | 決算申告料の目安 |
|---|---|---|
| 法人(年商1,000万円未満) | 2万〜3万円程度 | 月額顧問料の4〜6ヶ月分 |
| 法人(年商3,000万〜1億円) | 3万〜5万円程度 | 同上 |
| 法人(年商1億円超) | 5万〜10万円程度 | 同上 |
| 個人事業主 | 1万〜3万円程度 | 10万〜20万円程度 |
※上記はあくまで一般的な目安です。訪問回数・業務範囲・地域によって大きく変動します。
また、記帳代行を依頼する場合は月額1万〜3万円程度、給与計算を含めると月額4万〜5万円程度が追加でかかることも覚えておいてください。
安さ重視が招く「サービス不足」と「隠れコスト」
月額顧問料が1万〜2万円程度の格安プランの場合、基本的には「最低限の税務申告業務だけ」になることが多いです。毎月の面談、財務・資金繰りのアドバイス、積極的な節税提案——これらは「含まれていない」と考えた方がいいでしょう。
さらに厄介なのが「追加料金」の問題です。税務調査の立会い、融資相談、給与計算といった業務が別料金に設定されているケースは珍しくありません。契約前に確認していなかった結果、「思っていたより費用がかかった」というトラブルは非常によく起きています。
顧問料は「コスト」ではなく「投資」だと私は考えています。質の高い税理士と組むことで、適切な節税・資金調達・経営判断が可能になり、長い目で見れば必ず元が取れます。契約前に「何が含まれていて、何が別料金なのか」を必ず書面で確認するクセをつけてください。
ポイント2:自社の業種・規模に合った「専門性」を確認する
税理士はみな同じように見えて、実は得意分野がまったく異なります。医療クリニックを多く手がけている税理士、IT・Web系のベンチャーに強い税理士、製造業や建設業を専門とする税理士——それぞれの業種には固有の税制や会計処理の知識が必要です。
業種が異なれば、節税の方法も違います。自社の業界を深く知っている税理士であれば、同業他社の事例を参考にしながら、より的確で具体的な提案をしてもらえる可能性が高まります。逆に、自社の業界に不慣れな税理士だと、「一般論しか言えない」「業種特有の節税策を見落とす」といった状況になりかねません。
確認すべき3つの観点
- 自社と同業・同規模の顧問実績があるか
- 現在の自社の成長フェーズ(創業期・成長期・安定期)に対応できる経験があるか
- 関連する法改正や税制改正の情報を常にキャッチアップしているか
初回面談のタイミングで「弊社と同じ業種の顧問先はいますか?」「その業種でどのような節税提案をされていますか?」と直接聞いてみるのがいちばんです。具体的な答えが返ってくる税理士は、それだけ現場経験があると考えていいでしょう。
また、弥生株式会社が提供している税理士紹介ナビなど、業種や地域を絞り込んで税理士を探せるサービスを活用するのも有効な手段です。
ポイント3:「レスポンスの速さ」とコミュニケーション能力で見極める
経営の現場では、「今すぐ判断が必要」という場面が頻繁に起きます。融資の申請タイミング、想定外の大きな支出、取引先からの急な条件変更——そういった局面で税理士に連絡しても、返信が3日後では意味がありません。
一般的に、24時間以内にレスポンスがある税理士が信頼の目安とされています。繁忙期(1〜3月の確定申告時期)はどうしても遅れることもありますが、それを加味しても「遅くて困った」が続くようなら、要注意です。
初回面談でチェックしたい5つのポイント
初回の無料面談は、税理士の実力と相性を見極める絶好の機会です。以下の点を意識して確認してみてください。
- 専門用語をかみ砕いて説明してくれるか
- こちらの質問に対して、具体的に答えてくれるか
- 実際に担当になるスタッフが誰か、教えてもらえるか
- 代表税理士とスタッフの社内教育・フォロー体制はどうなっているか
- 連絡手段(電話・メール・チャットなど)の対応方針は何か
特に「担当者は誰か」という点は見落としがちですが、重要です。初回面談では代表税理士が出てきて好印象だったのに、実際の担当は経験の浅いスタッフだった——というケースは業界あるあるです。契約前に「実際に対応してくれる方と一度お話しできますか?」とお願いしてみることをおすすめします。
ポイント4:「節税提案・融資支援」の積極性を確かめる
税理士に求めることは、確定申告や記帳の代行だけではありません。特に中小企業・個人事業主にとっては、「どうすれば合法的に税負担を減らせるか」「どのタイミングで融資を受けるべきか」といった相談に乗ってもらえるかどうかが、経営の命運を分けることすらあります。
「試算表」を毎月出してくれるかを確認する
試算表とは、毎月の収支をまとめた財務資料です。これが毎月提出されているかどうかは、税理士の積極性を測る一つの重要な指標です。
先ほどご紹介した「顧問税理士実態大調査2024」のデータでは、成長企業の約76%が3ヶ月に1回以上税理士と定期的に打ち合わせをしているのに対し、売上減少企業では約48%にとどまっています。また、成長企業では試算表を毎月提出してもらっている割合が高く、それをもとにアドバイスを受けている割合も顕著に高いことが分かっています。
試算表が毎月手元にあれば、「利益が出すぎている月に節税を打てる」「キャッシュが減り始めたタイミングで融資を考えられる」など、先手を打った経営判断が可能になります。逆に、試算表が決算前後にしか出てこない場合、打てる手が大幅に減ってしまいます。
税務調査の対応力と融資支援の姿勢も確認する
初回面談では、以下の2点を直接聞いてみることをおすすめします。
- 「税務調査の際は、私の側に立って対応してもらえますか?」
- 「融資・資金調達の相談にも対応していただけますか?」
この2問に対して、具体的かつ前向きな回答が返ってくる税理士は、経営者のパートナーとして頼れる可能性が高いです。「税務調査は税務署との交渉なので……」と言葉を濁したり、「融資は専門外です」と切り捨てたりするようなら、経営サポートの観点では限界があると考えておいた方がいいでしょう。
ポイント5:「クラウド会計・オンライン対応力」を確認する
最後のポイントは、やや現代的な視点です。
「税理士は近所で選ぶ時代は終わった」——これは私が経験則から強く感じていることです。クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインなど)の普及により、データのリアルタイム共有・オンライン面談・チャットでのやり取りが当たり前になってきました。今は物理的に近い場所にいなくても、質の高い税務サービスが受けられる環境が整っています。
なぜクラウド会計対応が重要なのか
クラウド会計を活用することで得られるメリットは主に3つあります。
- 銀行口座・クレジットカードとの自動連携で記帳業務が大幅に効率化される
- リアルタイムで経営数値を税理士と共有でき、タイムリーなアドバイスが受けられる
- オンライン面談中心にすることで、訪問コストが削減され、顧問料を抑えられるケースもある
ただし、すべての税理士がクラウド会計に精通しているわけではありません。MM総研の調査(2025年3月時点)によると、クラウド会計ソフト国内シェアの状況は「弥生会計オンライン:55.4%、freee:24.0%、マネーフォワード:14.3%」となっており、これらのソフトに対応できる税理士かどうかは契約前に必ず確認が必要です。
オンライン対応税理士のメリットとデメリット
| 項目 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 面談 | 移動時間ゼロ・スキマ時間に相談可能 | 対面特有の空気感・信頼感が生まれにくい場合も |
| 費用 | 訪問なしで顧問料が抑えられることが多い | サービス範囲は事前に確認が必要 |
| 対応地域 | 全国どこでも税理士を選べる | 緊急時の現地対応が難しい |
| 情報共有 | リアルタイムでデータを確認・相談できる | ネット環境・ITリテラシーがある程度必要 |
地方にいても都市部の質の高い税理士を選べるのはオンライン対応の大きなメリットです。一方で「初めて会う税理士に大事なお金の話をするのが不安」という感覚もよく分かります。だからこそ、まずは無料の初回面談を積極的に活用して、複数の税理士と話してみることをおすすめします。
国税庁の公式ウェブサイト(国税庁 税理士をお探しの方)では、日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトへの案内がされています。怪しい事業者(いわゆる「ニセ税理士」)を避けるためにも、信頼できる公式情報を参考にしながら選ぶようにしましょう。
まとめ
ここまで、税理士の選び方で失敗しないための5つのポイントをお伝えしてきました。最後に整理しておきます。
- 顧問料の安さだけで選ばず、費用対効果で考える
- 自社の業種・規模・成長フェーズに合った専門性を確認する
- レスポンスの速さとコミュニケーション能力で相性を見極める
- 節税提案・試算表の提出・融資支援の積極性を確かめる
- クラウド会計・オンライン対応力を確認し、エリアに縛られず選ぶ
税理士選びは「とりあえず」で決めていい話ではありません。一方で、「完璧な税理士を探さなければ」と構えすぎる必要もありません。まずは複数の税理士と無料面談を重ねて、「この人なら話しやすい」「うちの業種のことを分かってくれている」と感じられる人を探してみてください。
顧問料は「コスト」ではなく「投資」です。自社に合った税理士を選ぶことで、節税・資金繰り・経営判断のすべてが変わってきます。良いパートナーとの出会いが、会社の未来を変える。私はそれを現場で何度も実感してきました。ぜひこの記事を参考に、後悔のない税理士選びをしていただければ嬉しいです。