「税理士に頼んでるけど、毎月の顧問料を払うほどの価値があるのか……」と、ふと感じたことはありませんか。
私は三上剛と申します。中小企業向けの経営コンサルタントとして20年以上、年商3,000万〜1億円規模の小規模法人を400社以上サポートしてきました。その中で何度も目撃してきたのが、「税理士の選び方ひとつで、会社のキャッシュが大きく変わる」という現実です。
実は私自身も、かつて格安の税理士と契約して痛い目を見た経験があります。記帳はやってもらえるけれど、節税の提案は一切なし。税務調査が入った際も頼りにならず、余計なコストが発生しました。あのとき「記帳代行だけやってくれる人」と「経営を一緒に考えてくれる顧問税理士」の違いを、骨身に沁みて学びました。
この記事では、「顧問税理士」と「記帳代行専門の税理士(または記帳代行サービス)」の違いを整理し、小規模法人がどちらを選ぶべきかを現場目線で解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
「顧問税理士」と「記帳代行税理士」─そもそも何が違うのか
顧問税理士とは
顧問税理士とは、法人や個人事業主と継続的な顧問契約を結び、税務・会計・経営全般をサポートする税理士のことです。
税理士には法律で定められた「独占業務」があります。それが以下の3つです。
- 税務代理(税務署への申告・届出などの代行)
- 税務書類の作成(確定申告書、法人税申告書など)
- 税務相談(節税対策・税制改正への対応アドバイスなど)
これらは税理士資格を持つ人間にしかできません。顧問税理士との契約では、記帳代行から決算申告、節税相談、税務調査の立ち会いまで、税務に関する業務をトータルでサポートしてもらえます。
法人の経営においては、日々の帳簿記帳だけでなく、経費の計上方法・役員報酬の設定・節税タイミングの判断など、専門家の視点が利益を左右します。顧問税理士は、こうした経営判断のパートナーとなる存在です。
記帳代行(専門)サービスとは
一方、「記帳代行」とは、その名のとおり帳簿の記帳作業を代行するサービスです。領収書や請求書、通帳のコピーを渡すと、勘定科目の仕訳・入力・帳簿作成をやってもらえます。
記帳代行は税理士の独占業務ではないため、税理士資格を持たない専門業者でも提供できます。コスト重視で「記帳だけ安く外注したい」というニーズに応えるサービスです。
ただし、決算書の作成・税務申告・節税相談は税理士にしかできません。そのため、記帳代行業者を使う場合は、決算時に別途税理士を手配する必要が生じます。「記帳と申告を別々の業者に頼む」という形になるため、責任の所在が曖昧になりやすいという問題もあります。
なお、税理士事務所が「記帳代行のみ」を低コストで提供するプランを設けているケースもあります。この記事ではそれも含め、「記帳作業に特化した関与スタイル」を「記帳代行(型)」として比較します。
2つのスタイルを一目でわかる比較表
| 項目 | 顧問税理士 | 記帳代行(専門サービス) |
|---|---|---|
| 記帳・仕訳 | ○(依頼可) | ○(主業務) |
| 決算書の作成 | ○ | × |
| 税務申告 | ○(独占業務) | × |
| 節税アドバイス | ○ | × |
| 税務調査の立ち会い | ○ | × |
| 経営・資金繰り相談 | ○(事務所による) | × |
| 月額費用の目安(法人) | 2〜5万円+決算費用 | 6,000〜2万円程度 |
| 責任の所在 | 明確 | 分散しやすい |
顧問税理士が担う業務と費用のリアル
依頼できる主な業務
顧問税理士との契約では、主に以下の業務を依頼できます。
- 日々の記帳代行・会計ソフトへの入力(オプション扱いが多い)
- 月次試算表の作成と確認
- 決算書・法人税申告書などの作成・提出
- 消費税・源泉所得税・地方税の申告
- 年末調整・法定調書の作成
- 節税対策・役員報酬設定のアドバイス
- 税務調査時の立ち会いと対応
ただし「どこまでが顧問料内の業務か」は事務所によって大きく異なります。「記帳代行は別料金」「税務調査の立ち会いはタイムチャージ」というケースも少なくないため、契約前の確認が欠かせません。
法人向け費用相場
弥生株式会社の「税理士相談お役立ち情報」によると、法人が顧問税理士と契約する場合の月額顧問料の目安は以下のとおりです。記帳代行なし・売上規模別の参考値です。
| 年間売上規模 | 年1回訪問 | 毎月訪問 |
|---|---|---|
| 1,000万円未満 | 1.5〜2万円程度 | 2.5〜3万円程度 |
| 1,000〜3,000万円 | 1.7〜2万円程度 | 3万円程度〜 |
| 3,000万〜1億円 | 2〜3万円程度 | 3〜5万円程度〜 |
これに加え、決算申告費用が年間10〜25万円程度、記帳代行を依頼する場合はさらに月1〜3万円程度が上乗せされます。小規模法人の年間総コストとして50〜100万円程度を見込むのが現実的です。
顧問税理士のメリット
- 節税対策のアドバイスを継続的に受けられる
- 税務調査が入っても対応を任せられる
- 決算書の精度が高まり、金融機関からの信頼も上がる
- 毎年の税制改正にスムーズに対応できる
- 融資・補助金相談も対応できる事務所も多い
顧問税理士のデメリット
- 月々の顧問料が固定費として発生する
- 担当者との相性が合わない場合、途中での変更がしにくい
- 契約内容によっては「思っていたよりサービス範囲が狭い」という誤算が起きる
私がこれまで見てきた失敗の多くは、顧問料の安さだけで選んで、いざというときに動いてもらえなかったケースです。価格と業務範囲の両方を確認した上で選ぶことが大切です。
記帳代行(専門)サービスの実態
業務範囲と費用相場
記帳代行サービスが担うのは、基本的に以下の2つです。
- 領収書・請求書・通帳コピーをもとにした会計ソフトへの入力・仕訳
- 仕訳データをもとにした帳簿(総勘定元帳・仕訳帳など)の作成
税理士事務所が提供する記帳代行の場合、月額3〜4万円程度が相場です。一方、税理士資格のない記帳代行業者では、月の仕訳数100〜250件程度で月額6,000〜2万円程度と、かなり安価になります。
ただし、記帳代行業者に依頼した場合、決算申告は別途税理士に依頼する必要があります。結果として「記帳代行業者+申告のみの税理士」という二重依頼になり、トータルコストが思ったほど安くならないこともあります。
記帳代行サービスのメリット・デメリット
メリットとしては以下の点が挙げられます。
- コストを抑えやすい(特に仕訳数が少ない場合)
- 契約の縛りが比較的緩く、変更しやすい
- 記帳だけを切り出してアウトソーシングできる
一方のデメリットはこちらです。
- 税務申告・節税相談は別途手配が必要
- 記帳と申告を別業者に頼むと、ミスが起きた際の責任の所在が曖昧になる
- 経営や資金繰りに関するアドバイスは受けられない
- 決算時に初めて会う税理士に丸投げすることになり、精度に不安が残る
記帳代行業者を利用するケースで実際に問題になりやすいのが、「申告内容に誤りがあった際、どちらに責任があるのか」という点です。責任の所在が不明確になると、余計なトラブルに発展するリスクがあります。
トータルコストで比べると、どちらが安いのか
よく「記帳代行のほうが安い」と言われますが、法人の場合はトータルコストで考える必要があります。以下は、年商5,000万円規模の小規模法人を想定した年間コストの比較例です。
| コスト項目 | 顧問税理士(記帳代行込み) | 記帳代行業者+申告税理士 |
|---|---|---|
| 月額費用 | 3〜4万円 × 12 = 36〜48万円 | 1.5万円 × 12 = 18万円 |
| 決算申告費用 | 15〜20万円(または顧問料内) | 15〜25万円(別途) |
| 節税効果 | あり(継続アドバイス) | ほぼなし |
| 税務調査対応 | 込み(事務所による) | 別途費用が発生 |
| 年間概算 | 51〜68万円 | 33〜43万円 |
表を見ると記帳代行型のほうが安く見えますが、節税アドバイスや税務調査対応を受けられないことを考えると、単純な費用比較では判断できません。顧問料はコストではなく「投資」という視点が、小規模法人の経営には必要です。
小規模法人はどちらを選ぶべきか
顧問税理士が向いているケース
以下に当てはまる法人は、顧問税理士との継続契約が有効です。
- 年商が3,000万円を超えている、または目指している
- 融資・借入を検討している(決算書の質が金融機関の評価に直結する)
- 節税できる余地がありそうだが、具体的な方法がわからない
- 税務調査のリスクに不安を感じている
- 経理担当がおらず、決算や税務申告を自社では対応できない
- 役員報酬の最適化や事業承継を将来的に考えている
特に融資審査では、決算書の内容が会社の信用度そのものとして評価されます。長期的に金融機関との関係を築くためにも、質の高い決算書を継続して作れる顧問税理士の存在は非常に重要です。
記帳代行(の比重を高める)で十分なケース
一方、以下のような状況であれば、記帳代行の比重を高めてコストを抑える選択肢もあります。
- 設立直後で売上がまだ少なく、取引数も少ない
- 自分自身が簿記の知識を持っており、入力作業は自社で対応できる
- クラウド会計(freeeやマネーフォワードクラウドなど)を活用して自社で記帳している
- 当面は決算申告のみをスポットで税理士に依頼するつもりでいる
ただし、「記帳代行業者+申告のみの税理士」という組み合わせは、責任の所在が曖昧になりやすい点に注意が必要です。クラウド会計を自社で入力しつつ、顧問税理士にチェックと申告を依頼するスタイルが、コストと安心のバランスとして最も合理的だと私は考えています。
後悔しない税理士選びのチェックポイント
最後に、私がコンサルティングの現場で実際に使っているチェックリストをお伝えします。税理士を選ぶ際には、以下の点を必ず事前に確認してください。
- 月額顧問料に何が含まれているか(記帳代行・決算申告の有無)
- 追加料金が発生するケースが明示されているか
- 税務調査の立ち会いは顧問料に含まれるか、別途費用か
- 節税対策を積極的に提案してもらえるか
- クラウド会計への対応力があるか(ITリテラシーの確認)
- 同業種・同規模の顧問実績があるか
- 担当者が税理士本人か、スタッフに丸投げされないか
「料金表をホームページに公開していない事務所は要注意」というのも私の経験則です。透明性のある事務所ほど、後からトラブルになりにくいと感じています。
税理士選びの参考情報として、freeeが公開している「個人事業主に税理士はいらない?依頼するメリット・デメリットや費用相場を解説」は費用感の整理に役立ちます。また、顧問契約前の具体的な確認ポイントについては、弥生株式会社の「顧問税理士とは?顧問契約のメリットや契約前に注意すべき点」も参考になります。
まとめ
今回の内容を整理すると、以下のとおりです。
- 顧問税理士は記帳から申告・節税・税務調査対応まで一括でサポート。小規模法人にとって最も安心できる選択肢
- 記帳代行(専門サービス)はコストが安い反面、申告・節税アドバイスは別途手配が必要で責任の所在が分散しやすい
- 年商3,000万円以上の法人や、融資・節税を意識している場合は、顧問税理士との継続契約が費用対効果で優れる
- 設立直後・低売上の段階であれば、クラウド会計を自社で入力しつつ、費用を抑えた顧問プランを探すのが現実的
「税理士は近所で選ぶ時代は終わった」というのが私の実感です。オンラインで対応可能な税理士も増えており、料金の透明化も進んでいます。「安かろう悪かろう」で選んで損をしないためにも、記帳代行か顧問契約かを判断する前に、まず自社の現状と課題を整理することから始めてみてください。
一緒に、税理士選びを成功させましょう。